男子体操団体、復活金…最後の鉄棒で大逆転
男子団体総合で優勝し、表彰台で手を振る日本チーム
(左から)米田、水鳥、鹿島、冨田、塚原、中野の各選手

 【アテネ16日=久保武司】「体操ニッポン」が、ついに復活した。男子団体総合決勝で日本は、最終種目の鉄棒でルーマニアを逆転し、5連覇の最後となった76年モントリオール五輪以来、7大会28年ぶりの団体金メダルを獲得した。日本は決勝第1ローテーションの床を7位でスタートしながら、得意種目のつり輪、平行棒で追い上げ、最後の鉄棒で米田功(26)、鹿島丈博(24)、冨田洋之(23)が完璧な演技で高得点を奪い息詰まるような接戦を制した。

 アテネの体操会場、オリンピックインドアホールに君が代が流れ、日の丸が揚がると、スタンドから「体操ニッポン、万歳!」の大声がこだました。表彰台の6人は晴れやかな表情だったが、スタッフや関係者のほとんどが泣いていた。

 最後の鉄棒を残して、首位ルーマニアとはわずか0.063の差。3位には米国が0.062差で追っていた。わずかなミスも許されない状況だった。加納実監督は「鉄棒のときには足が震えた」といい、普通は10点満点を狙う演技構成のところ、「鉄棒は9.9点で行け、演技構成を少し落とせ」と電話で伝えた。

 過酷な緊張は、ライバルも同じだった。ルーマニアはエースが落下。米国もポール・ハムが離れ技のトカチェフで鉄棒を握り損ねた。

 最後の日本は1人平均9.525で金メダルが手に入る。それでも米田はコバチに新月面、鹿島もコバチ、伸身新月面を決め、9.787、9.825の高得点。大トリの冨田は難しいコールマンを決めて新月面でピタリと着地し、9.850。堂々の金メダル奪還の瞬間、冨田は右腕でガッツポーズを作り、あまりの完璧な演技に米国の選手も拍手を送った。

 冨田は最後の鉄棒で、「点差なんて考えないで自分の演技をしようと3人で話し合った。コールマンをしっかりやろうと思った。あとはすべてイメージどおり。『絶対に(演技構成を)通す』と心の中で叫んだ」という。選手の“造反”にも加納監督は「あのプレッシャーがかかるなか、それでもコールマンなど、難度の高い技をやってくれたのでうれしかった。チームワークの勝利です」と話した。

 苦しい勝負だった。6人の選手中、3人の演技の各種目得点の合計で争うなか、最初の床ではベテランの塚原直也(27)、米田、中野大輔(21)の得点が伸びず、7位発進。あん馬で塚原、冨田、鹿島が高得点をあげて3位に上がり、つり輪で米国のブレーキを尻目に、水鳥、塚原、冨田が力技の連続で2位に。跳馬、平行棒でも鹿島、米田、冨田がノーミスでルーマニアに迫ったが、大舞台に強い米国もすぐそこまで追いついていた。

 それでも最後に振り切ることができたのは、6人の多彩な顔ぶれのチームワークだった。3大会連続五輪出場の塚原が精神的支柱となり、冨田と米田のオールラウンドの安定感。あん馬、鉄棒のスペシャリスト鹿島。つり輪など力技系の水鳥。大技一発の中野。それぞれの持ち味が絡み合っての金メダルだった。

 五輪で日本の男子団体は60年ローマ五輪から東京、メキシコ、ミュンヘン、モントリオールと5大会連続で金メダルを奪ったが、モスクワのボイコットで退いた王座に、返り咲くことはなかった。5連覇に貢献した塚原光男総監督は「声を出し続けて枯れちゃったよ。金メダルはモントリオール以来というけど、体操界が元気がなかったのは、いい選手が集まらなかっただけのことです。われわれのときと一緒で、とにかくいい選手がようやく集まったから勝てた。(息子の直也は)若手が多い中で、1人だけ五輪を経験しているので、その存在が大きかったんじゃないかな。おめでとうといってあげたい」と話した。

 そして、金メダルの着地を決めた冨田は「今までにない合宿をしてきた。だから結果を信じていた。最強のメンバーがそろったという感じです。本当に夢のようです」と笑顔をみせた。(夕刊フジ)


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